Ancient Japan

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「古代に人が洞窟に住んだ理由。『火』の文化」

この写真は、フランスのラスコー洞窟の壁画です。有名ですね。一万五千年程前に、クロマニヨン人によって描かれたそうです。

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洞窟には、古代人の足跡が残っている場合が大変多く、洞窟は考古学的に非常に重要な場所なんですね。

一体なぜ、古代人達が洞窟の周辺で生活していたかと言うと、一番重要な問題は、「火」の管理だと考えられます。

実に、「ヒト」は「火」を使う事で、「サル」とは違った方向に進化して行ったと言う事なんですね。

この事を、Wikipedia - 「火の使用」から抜粋しますと、

「初期のヒト属による火の利用が始まってから、ヒトの社会文化的進化は急激に早まった。ヒトは火を調理に使い、暖を取り、獣から身を守るのに使い、それにより個体数を増やしていった。火を使った調理は、ヒトがタンパク質や炭水化物を摂取するのを容易にした。火により寒い夜間にも行動ができるようになり、あるいは寒冷地にも住めるようになり、ヒトを襲う獣から身を守れるようになった

ヒトの生活は、火とその明るさで大きな影響を受けた。夜間の活動も可能となり、獣や虫除けにもなった。また、当初は火を起こすのが難しかったため、火は集団生活で共用されるべきものとなり、それにより集団生活の必要性が増した。

火の使用は栄養価の向上にも繋がった。タンパク質は加熱することで、栄養を摂取しやすくなる。黒化した獣の骨から分かるように、肉も火の使用の初期から加熱調理されており、動物性タンパク質からの栄養摂取をより容易にした。加熱調理された肉の消化に必要なエネルギーは生肉の時よりも少なく、加熱調理はコラーゲンのゼラチン化を助け、炭水化物の結合を緩めて吸収しやすくする。また、病原となる寄生虫や細菌も減少する。

また、多くの植物には灰汁が含まれ、マメ科の植物や根菜にはトリプシンやシアングリコーゲンなどの有毒成分が含まれる場合がある。また、アマ、キャッサバのような植物に有害な配糖体が含まれる場合もある。そのため、火を使用する前には植物の大部分が食用ならなかった。食用にされたのは種や花、果肉など単糖や炭水化物を含む部分のみだった。ハーバード大学のリチャード・ランガムは、植物食の加熱調理でデンプンの糖化が進み、ヒトの摂取カロリーが上がったことで、脳の拡大が誘発された可能性があると主張している。」

と言う事だそうですが、初期の頃の人類の火の使用は、この写真ように、火山の近くに限られるようです。


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このあいだ、アンダマン諸島の先住民に付いて書きましたが、アンダマン諸島の先住民は、他の文化と接触するまで、火の起こし方を知らなかったそうで、一旦火を失ってしまったら、次に落雷によって火が確保されるまで、待つしかなかったそうです。

この写真のような、木と木をこすりつける事で火を起こす、摩擦式発火法を手に入れるまで、人類は火山の噴火や落雷や山火事等によって偶発的手に入れる事が出来た「種火」をただひたすら絶やさない様に保ち続けるしかなかったんですね。


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そんな「種火」を維持するには、風雨に耐える場所が必要です。

何百万年と言う長い期間、人類が洞窟の近くに住み続けた理由は、まさにそこに有ると言えます。

と言う事で、洞窟での人類の足跡が見られなくなる時期が、人類が「摩擦式発火法」を手に入れた時期と重なる筈ですね。

洞窟に壁画が残されていると言う事は、そこで古代人が「種火」を維持する必要があったと言う事を示していると言えると考えています。



リオ・ピントゥラスの「手の洞窟」の壁画(アルゼンチン、パタゴニア)。


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アボリジニのノーランジーロックの壁画(オーストラリア)。



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